【レゴ作品】深淵の墓場から蘇った霊柩車
The Hearse
霊柩車ベースのホットロッドというと、最近ではモンスターファイターでのセット(8幅車)が記憶に新しいですね。
しかしこの"4幅"で製作された霊柩車は、そのリリースよりもはるか以前から、この世に存在していたのです。
この作品は先日の埼玉新都心レゴオフにて初めて公にお披露目した作品です。
作品のテーマとしてタブーとすら思えるような霊柩車をこんなシャコタンにしてしまうなんて、いかにもTamotsuがやりそうなことだと、一部の人は思うかもしれません。
しかし私が持ち込んだこの作品、当然ここでも"My Garage"カテゴリで紹介するものですが、実は私が作ったものではありません。
製作者は私の唯一の兄弟である、4つ上の兄でした。
---
--
-
私のレゴ暦は、自分の誕生とほぼ時を同じくしてスタートします。
遊び道具としてレゴを与えられたのは、父親の教育方針でした。
与えられたレゴも父が子供のときに遊んでいたものでした。
私たち兄弟は2人とも、小さい頃からブロックをかき回して遊ぶ環境にいました。
そしてレゴともう一つ、私たちの興味の対象だったのは車です。
物心付く前から私たちはカーショーやドラッグレースを体験し、テレビではナスカーやインディ500、ミッキー・トンプソン・オフロード・グランプリなんかを見て育ちました。
そんな環境であったため、レゴで作るのも車が自然と多くなりました。
私は小さいときから生粋のポルシェマニアでしたが、その当時はレゴでポルシェを作ろうだなんて考えは毛頭ありませんでした。
その代わりに、映画「ブルース・ブラザーズ」が大好きだった私のお気に入りは、パトカーなどの警察シリーズでした。
一方兄はアメ車などのアメリカ文化に小さい頃から傾倒しており、その頃からホットロッドテイストの強い車を作っていました。
特に車高を低くすると言うところには、私とは段違いの拘りを持っていました。
小学生頃までは子供の遊びとしてレゴに触れていましたが、中学生になってからインターネットをするようになり、Brickshelfなどのレゴサイトで他の人が作った作品なんかを見るようになりました。
そのときから、レゴを遊びではなく大人の趣味として捉えて、パーツの整理・分類をするようになりました。
当時私がはまっていた映画「マッドマックス」の車両再現を中心に、私は大人ビルドの世界へと入っていくことになります。
この時点で私は、90年代レゴの4幅車を一旦捨てて、6幅車をメインとするようになりました。
一方の兄はその頃は高校生~就職の時期でした。
既にレゴをやっているのは私の方が多くなっていましたが、兄も車の作品をちょくちょく作っていました。
そして兄が就職して家を出た後、レゴは全て私の管理下に置かれるものになりました。
衣装ケースに放り込まれたパーツ類は、全て百均ケースに分類しました。
しかし一部のレゴは衣装ケースの中から持ち出されませんでした。
それは兄が作ったまま残していった車作品群です。
他人の作品を勝手に壊すことをしたくなかったため、それらは仕舞われたまま、物置と化していく兄の部屋に取り残されたのでした。
-
--
---
今年に入り、母が家の整理を始めたことで、そのレゴたちが約10年ぶりに出てきました。
4幅車が多数含まれていましたが、ほとんどのものは今更紹介するほどでもないような作品ばかりでした。
白パーツは黄ばみ、パーツが外れて欠品しているものも多くありました。
しかしそんな中で、一つの作品だけが、完璧な姿のまま残されていたのです。
その姿はまるで、墓石の下で復活するときを待ちながら、腐敗することなく眠っている吸血鬼のようでした。
私はこの一台だけは、世に発表するべき作品だと思いました。

私は発見されたこの車を、一切手を加えずに保管しています。
白パーツは既に黄ばみが出ていますが、それはこの作品が長い間埋もれていた土汚れのようなものです。
パーツをリフレッシュすれば、もう少しマシな見た目になるかと思いますが、あえてそれをすることはやめました。
当時のレゴシステムの傾向から、やっぱり車作品は白や赤基調で作ることが多かったです。
また黒パーツ自体もあまり豊富ではありませんでした。
そんな中で、黒パーツをふんだんに使ったこの霊柩車は特別なオーラを発しているように見えました。
実際にこの作品でも、フロントに使っている4x5フェンダーが白しかなかったため、全体に白ラインを入れざるを得なかったように見受けられます。
しかしこの白ラインが、おどろおどろしい霊柩車の雰囲気を品のあるものに仕上げてくれています。
ホイールに関しても、やっぱり選択肢は白くらいしかありませんでしたが、それが返って良いアクセントになっています。

架装部分はボディよりも広い5幅で作られています。
偶数幅から奇数幅への変換が、この作品の大きな見所となっているのは間違いないでしょう。
組み方は非常に強固で、触っていて崩れるようなものではありません。
スロープを使った屋根のつながりも、違和感なくスムーズにまとめられています。
また足元に目を移すと、リアフェンダーは当然4幅の車フェンダーがつかえないため、逆スロープによるものとなっています。
組み合わせるのは当時一番格好良かったワイドスリックで、前輪のナロータイヤとの対比でホットロッド流のバランスとなっています。
また前後輪両方ともが、タイヤがボディ幅より内側に収まるツラウチとなっており、これは絶対に意図的な拘りでしょう。

前傾姿勢が強調される後ろからの眺めは、強くホットロッドを感じます。
大きな架装部分の位置が上がって、独特なボディシルエットを出していますね。
車高の低さもかなり拘りがあり、地面と接触しない限界の位置までプレートでボトムラインが延長されています。

真横から見ても当たっているのではないかと思うような、低い位置にプレートがあります。
しかし実際には地面との接触は全てクリアされています。
勿論傾斜や突起などが少しでもあれば擦りますよ。
この普通の乗用車と比べて巨大な車体も霊柩車の魅力でしょうね。

後ろには棺を入れるためのドアがあります。
中は3幅ですが、さらに余裕を作るために、パネルが使用されています。
冒険家シリーズのファラオの棺おけを入れてみようとしましたが、入りませんでした。
当時はガイコツなんかを入れていたような気がします。

前輪はフェンダーと車軸の間にプレートを挟まないで、スラムド化しています。
4x5フェンダーとナロータイヤの組み合わせで可能となるこのビルテクは、兄が考案したものです。
タイヤはフェンダーハウスの天井と軽く接触はしていますが、手転がしには支障のないレベルで回すことが可能です。
ちなみに普通の2x4フェンダーだと、完全にタイヤがはまり込んでしまい、走らせることができません。
またここで注目なのがヘッドライトで、"LEGO"ロゴが左右とも正向きで取り付けられています。
とても偶然とは思えない、果てしない拘りです。

奇数幅の組み方は、見えない部分での帳尻合わせが重要です。
こういった「裏側」を表面からは悟られないように組むのが、ポイントですね。
もう一度トップ画像です。

レゴを全て残していった兄は、たぶん今やレゴに大きな興味は持っていないでしょう。
今では自分のビートルに北米仕様パーツを取り付け、USDM jamに参加するような立派な北米野郎となっています。
実際に会うのは年一回くらい、それもカーショー会場くらいで、そこでも短い会話のみ交わして別れます。
それでもきっとこの作品は、ネット上にいつまでも記録され、他のビルダーに何かしらのインスパイアを与えることになるのでしょう。
- 関連記事
スポンサーサイト